DAMDAM

Conversations with

Alexandra Senes

BY ジゼル・ゴー & フィリップ・テリアン

Photographed by Giselle Go and Philippe Terrien

Alexandra Senes(アレクサンドラ・センヌ)はパリの自宅に私たちを招き入れてくれた。小さな三つ編みで髪をまとめた彼女はたった今、夜間便で到着したにも関わらず、 満面の笑みで私たちを迎えてくれた。Alexandraは実のノーマッドと言える人物で、それがパリの撮影スタジオであれ、メキシコの床に座り込み女性刺繍職人と対話する場であれ、いつでも自然体のままだ。 フランス雑誌「Jalouse」の創刊者兼編集長として活躍し、合間にテレビ出演やブランドコンサルタントをしていた彼女は、自身のブランド「Kilometre Paris」のデザイナーとしてさらなる自己啓発に挑んでいる。

Kilometreはその創設者と同じくらい興味をそそるストーリーを持つブランドで、その起源はフリーマーケットで見つけた19世紀のフレンチリネン製の作業用シャツだった。とっさにシャツのストックを全て買い付けたAlexandraは、メキシコの刺繍職人たちの技術を借り、購入したシャツに世界中の未開発の地を刺繍で記録する旅を始めた。「明日のイビザ」と称する場所のGPS座標から、クロアチアとベリーズのエコリゾートを支援しているブラッド・ピットとレオナルド・デカプリオの顔まで、デトロイト州のagri-hood (アグリフッド:農業を主に営んでいる地域)から、ブラジルの「新しいジェリコアコアラ」と言われる地まで、AlexandraのKilometreコレクションには、彼女の手を通していない作品などない。

ある意味Kilometreは、現代社会で無くなりつつある職人の技術を保存しようとする思い入れが込められている。Alexandraは、頻繁に訪れるインドで、カディ(粗い手織りの綿布)作りの職人達をサポートすべく、彼らの作品を自身のコレクションに含んでいる。モロッコのバスケットや、セネガルの塗料皿、フェズの織り子が作るカーペット、メキシコとインドで縫われるシャツの刺繍など、Kilometreは世界中のアーティザンの溜まり場となっている。いつ見ても活気溢れるAlexandraと、彼女の自宅で話を聞いた。

出身地や今の拠点、されているお仕事など、自分について少し聞かせてください。

生まれはアフリカで、8歳の頃まで住んでいたわ。それからニューヨーク、南フランス、そしてパリに移った。パリを初めて訪れたのは17歳の頃で、そこで学校に通っていたわ。14歳の頃からジャーナリストになりたかったの。何になりたいかわかっていたから、それを成すことができた。私がやることは全て人に会って、インタビューをすることよ。何年もの間色んな雑誌や新聞で仕事をしていたわ。

その経験から、Jalouseと言う雑誌を創刊した。それが19年前のことね。普段日にちを覚えたりしないんだけど、1998年は娘が生まれた年で、その2ヶ月後Jalouseを創設したから、はっきり覚えているわ。この年を軸に、その前に起きたこと、その後に起きたことって覚えているの。その他で起きたことは気にしない。19年前にJalouseが始まって、8年間雑誌を統括していたわ。

10年前にはSASと言う会社を立ち上げた。ブランドコンサルティング、主にブランドのウェブサイトのアドバイスをしていたわ。パキスタンのファッションウィークも担当したし、ベイルートの政府のために本も書いて、エルメスとも仕事をしたわ − そこでフィリップと出会ったのよ。当時、「Air de Paris」って言う、日本市場向けの日本のラジオ番組をパリでやっていた。パリの大規模ファッションフェアでも仕事をして、その仕事自体は好きだったんだけど、品の悪い概念だったわ — いわゆる「フェアビジネス」って言うのがね。全く環境のことなんて考えてないし、でも大量の仕事を片付ける技術が身についたから、結構好きだったわ。文章を通じて会話をするジャーナリストだったのに、雑誌を通してだけじゃなくて、いきなり百万人の人の前に立って話さなくちゃいけなかったのよ。またそこからブランドのアートディレクションを担当したり、テレビ番組に出たりもして、本も書いたわ。本当に色々なことをやっているのよ!

地理座標が刺繍されているKilometreのクッション /  Alexandraの旅の土産に入れて出されたコーヒー

「フリーマーケットで19世紀のメンズのリネンシャツを見つけたの。全てのシャツには物語が入っていて、世界中のネクスト原宿、サン・トロペ、アスペンと称する場所を縫いこんでいるわ。」

今はファッションブランドもお持ちですよね。それはどうやって始めたんですか?

2年前から自分のブランドを持っているわ。フリーマーケットで19世紀のメンズのリネンシャツを見つけたの。「Chemise de fer」って言って、フランスでは作業員のシャツをして着られるの。それを見つけた時に、売っている女の人にこのシャツがすごく好きだと伝えたのよ。ヒール、フラットシューズ、パジャマ、外出用と、とにかく着回したわ。私にとってはデニムみたいなものよ。私、デニムは一切着ないけど、作業着はたくさん着るわ。それを彼女に言ったら、400枚のストックを持っていると言うから、どうするのかもわからないで、その場で400枚を全部購入しちゃったわ。

メキシコで先生をしていたから、刺繍や手芸のコミュニティを知っていたの。そこから生徒一人に呼びかけて、刺繍をしている女の人たちがいるコミュニティを紹介してもらって、収益が直接彼女たちに渡るようにしたわ。全てのシャツには物語が入っていて、世界中のネクスト原宿、サン・トロペ、アスペンと称する場所を縫いこんでいるわ。ネクストアスペンはニセコになるわね。次のホットスポットとなるような場所を探すのが得意なのよ!

私にとってネクストブルックリンや青山になりそうな旅先を25ヶ所リストアップして、今はそれを一緒に紙に描いてくれる人と、シャツをデザインしてくれるPatrick Stephan(パトリック・ステファン)がいるわ。昔の作品は一般的な形式で、S、M、Lで製造した。皆私をファッションデザイナーと呼んでいるけど、それは違うわ。私はファッション会社の統括者なのよ。チームをリードして、ファッションとトラベルのストーリーをどうやってうまく合わせるかを考案するの。ファッションとトラベルのストーリーはすごく重要ね。今はたくさんのファッションブランドがあるでしょ、だから私はいらない、トラベルだけだとありきたり。フードはものすごく進んでいるし、アートも同じね。そう言った意味でトラベルが少し遅れているから、ファッションをうまく溶け込ませる必要があるわ。

次のホットスポットはどこだと思いますか?

東京だと、吉祥寺ね。すでに吉祥寺に関するシャツを作ったわ。あともう少しで開発化が進んでしまうから。ブラジルにジェリコアコアラって言う場所も良いわ。20年前に、ネクストゴアって言われていた場所なの。だから今のネクストジェリコアコアラは、ブラジル北部にあるアチンスと言う地域ね。

特定の場所じゃなくて、現象を刺繍にしたこともあるわ。「agri-hood」って言って、農業を主要産業としている地域のことで、デトロイト州にあるの。デトロイトはアートの空間が多く占めていて、私はそれにうんざりしちゃったのよ。逆にagri-hoodは主旨があるムーブメントだと思ったわ。周りに勧めている「Demain」って言うフランス映画があるんだけど、映画の中で環境的課題を解くソリューションを解説していて、結末には、同じことを他の人たちが80パターンで実行していると言う内容なの。とても小規模で個人の空間で行う習慣なんだけど、それが世の中には大きい影響を与えるって言う、デトロイトのagri-hoodを代表するような素晴らしい例だわ。

南フランスだと、アルルにある「Le Parc de l’Atelier」(ル・パルク・ド・ラトリエ)と言う場所ね。Maja Hoffman (マヤ・ホフマン)って言う女性が支援している都市なのよ。有名なアーティストは皆アルルを通っているわ。Christian Lacroix (クリスチャン・ラクロワ)もアルルが大好きで、Eric Bergere(エリック・ベルジェール)も最近そこでショップをオープンしたわ。10年後にはアルルも完全に現代化されてしまうかもね。フォトグラファーのFrank Gehry (フランク・ゲーリー)にMaja Hoffmanがお願いして写真展を開いたこともある。そんなに美しくはなかったけど、作品によって街が活性化されて雰囲気と見る視点が変わるから、このようなプロジェクトは好きよ。

もっとオーセンティックな場所で、ギリシャのKastellorizo(カステロリゾ)と言う島があるわ。水問題で一生開発が難しい地域なんだけど、水位がものすごく深いからヨットがたくさん訪れる場所でもあるわ。著名人が訪ねては去るようなところね。島にホテルは2軒しかないのよ。とてもギリシャっぽい隠れ場的な旅先だわ。

Alexandraの地球儀コレクション / 刺繍が施されたマリニエールとカディのラック

 

「特定の場所じゃなくて、現象を刺繍にしたこともあるわ。「agri-hood」って言って、農業を主要産業としている地域のことで、デトロイト州にあるの。Agri-hoodは主旨があるムーブメントだと思ったわ。周りに勧めている「Demain」って言うフランス映画があるんだけど、映画の中で環境的課題を解くソリューションを解説していて、結末には、同じことを他の人たちが80パターンで実行していると言う内容なの。それが世の中には大きい影響を与えるって言う、デトロイトのagri-hoodを代表するような素晴らしい例だわ。」

様々な要素からインスパイアされているようですが、コレクション全体の共通のテーマはありますか?

刺繍のテーマに制限はないわ、美術館でもスキー場も縫える。強いて言えば、「旅」がコレクションを統一するテーマね。トラベルを基盤に、コレクションは二つのパーツに分かれている。「ヴィンテージ」コレクションは、必ず旅先で手に入れたヴィンテージの品を展開している。私の母なんて、この夏シャツを6枚も買ったんだけど、もう見つけることが出来ないものなの。私たちは作業着を見つけてそれに刺繍を入れているわ。日本のエブロンとマリニエールシャツも見つけたの。

もう一つは「インスパイア」コレクションで、古いオリジナルの衣類が含まれているわ。カディは、ガンディーがインド独立の際に使った手縫いのコットンで、インスパイアコレクションはカディで製作している。今だと、カディを一生使うのは田舎の人々のみね。

実はカディってすごくリッチでラグジュアリアスなのよ — 欠点が多かったりするけど、その完璧じゃない手作り感がすごく良いの。最近カルカッタの町を訪れたわ。そこで、80歳の老人が70年間も同じ手織り機で、ずっと使っているカディを5年ごとに直していて、その「カタン、カタン、カタン」って言う音を聞いた時は泣きそうになったわ。このように、作っているプロセスやその村を見て肌で実感すると市販のコットンなんて使えなくなるわ。収益が直接子供の食事に繋がるように見えて来るの。大きな工場なんかにお金を払うのより全然満足感が高い。ジャーナリスト、そして旅人として得るものが遥かに多い。もっと感情がこもっているのよ − まさに私のDAMDAMね!出張から帰って来るととても満たされた気分になるわ。色々ともらって帰って来るの。

たくさん旅をされていますが、一番心地良いと思う場所はどこですか?

パリに住んでいるからパリジェンヌと言えるけど、でも感覚的には世界の市民って感じね – 周りからもそう言われるの – リヨン、ベイルート、東京、ニューヨークにも足場がある。常に旅しているわ。例えば先週はブリュッセルのパーティーに行ったんだけど、会場のお家が空港の隣で、友人に「空港の隣だからパーティーに来たんでしょ!」と言われたくらい。私がいつも飛行機、電車、バスで移動していることを皆知っている。どこにいても心地良いし、時差ボケもないわ。

クロアチアのエコリゾートを支援している俳優、ブラッド・ピットが刺繍されているユーモア溢れるKilometreのデザイン

「最近カルカッタの町を訪れたわ。そこで、80歳の老人が70年間も同じ手織り機で、ずっと使っているカディを5年ごとに直していて、その「カタン、カタン、カタン」って言う音を聞いた時は泣きそうになったわ。作っているプロセスやその村を見て肌で実感すると市販のコットンなんて使えなくなるわ。収益がどこに直結するか分かるから。。。大きな工場にお金を払うのより全然満足感が高い。もっと感情がこもっているのよ − まさに私のDAMDAMね!」

頻繁な飛行は肌にとても負担をかけると思いますが、特別なケアや時差ボケ対策などはありますか?

良いフェイスオイルとデイクリームを顔に塗っている。肌に塗るのはそれだけで、効果は結構あると思うわ。時差ボケ対策には、飛行機内で何も食べないこと。そして目的地に到着したら腹ペコだから現地の食事を摂るわ。だから体が自然と順応する。あとは夜8時前は寝ないようにして、とにかく体を追い込むと、早く馴染めるわ。飛行の時間も聞かないし、時計も見ない。自分にとっては瞬間移動のようなものね。目的地にテレポートする感じで、どのくらい時間がかかったのかわからないようにする、ちょっとしたごまかしね!

ビューティーにおいてこだわりや自分へのご褒美などはありますか?

デイクリームの匂いがすごく好き – それがとても重要。他の人の匂いを嗅ぎたいから香水はつけない。つけている香水で友達を区別することもできるわ。好きな香水があるとしたら – 名前のせいだと思うけど – Bal d’Afrique(バル ダフリーク)ね、出身がアフリカだから。Byredoの製品で、同じ香りのハンドクリームを見つけた時はもうワクワク!完全にコントロールを失って香水まで買っちゃったわ。だからたまにつけるわね、多分15日に一回のペースくらいで。でもジュエリーをつけるのと同じ感覚で、たまには香水も変えるわ。香水は10種類くらい持っていると思う!

冷たいシャワーを浴びるのも好き。お風呂に浸かるのはかなりの贅沢で、ほら、環境にあまり良くないでしょう?だからホテルに泊まる時にたまに浸かったり、普段はバスタブがあっても使わないわ。塩を入れて、本を読みながら1時間程浸かる。これも6ヶ月に一回のペースでね。

Kilometre SS18のコレクションの作品とアクセサリー

どこからインスピレーションを受けていますか?

子供の頃から人々に会うのがインスピレーションの基だったわ。人々をインタビューすること。今は刺繍職人と話したり、韓国やリヨンのバイヤーと交流したり、色んな人と出会いインスピレーションを受けている。他人こそが、私のエネルギーの源なの。著名人が良くセント・バーツ島に行く理由は分かるわ。顔を知られているから安心するのよ。私の場合は逆に、自分がいて安心しない場所、私のことを誰も知らない場所にいるのが好き。雑誌の編集長だった頃はテレビ番組に出演していて、顔を知られるのがすごく嫌だった。私にとっては、ロスト・イン・トランスレーション(コミュニケーションが通じない)が一番良い。何事もゼロから始められるからよ。

 

Kilometre Parisに関する詳細は、以下のリンクでご確認できます。
www.kilometre.paris/

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